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「フォニク大佐!実験サンプルが突然暴れだし……っ!」 「制御不可能です!至急応援を………」 人の悲鳴と共に、肉が千切れる音、骨がへし折られる音が通信機を伝って聞こえてくる。 「くそ、何故、何故目覚めたっ!?」 フォニクと呼ばれた男性が見た目からはおよそ想像の付かない大声を上げ、嘆く。それほど誰もが予想しなかった事態なのだろう。
最早悲鳴すら聞こえなくなった通信機を乱暴に机に置き、やや駆け足で執務室を出る。 「アレが外界に出てしまったら大変なことになるぞ…っ」 研究施設内にいた人間は皆先程の実験室にいたため、彼の声に答える者は誰もいなかった。
廊下の一角を曲がると、そこには少女が立っていた。髪の毛を肩まで切り揃えて、純白の実験体用衣類を着ているごく普通の少女だった。 一つ不審な点があるとしたらそれは、大量の血液が至るところに付着していることだった。 「…君を施設より外に出すわけにはいかない」 そう言いながら腰に挿していたサーベルをすらりと抜き取る。
少女は彼を虚ろな目で見つめたまま動こうとはしない。
それでもフォニクは視線を逸らすことが出来なかった。逸らした刹那、確実に殺されると脳のどこかで理解していたのだろう。彼女の移動速度が異常なまでに発達しているのは既に報告されている。
ふと、少女が僅かに微笑んだ。 目許は全く笑っていない、氷の笑みだった。 その悪魔の笑みに寒気を感じていた刹那、少女がフォニクの背後を突いた。
一撃。
軽い貫き手だった。
発達した爪が彼を貫いた。
彼女は発見されないまま、5年という歳月だけが流れていった。
噂では、第5区【殲蟲】にその身を潜めているとされ、近いうちに軍による掃討作戦が開始される。これは同時にレジスタンスと軍の雌雄を決する絶好の機会でもある。
5年前に軍の実験施設を脱走した少女。 データベースにはこう記されている。
『実験体ナンバー22310、”久遠 ”』
それは、血に飢えるという非常に稀有な性質を持った軍の失敗作。
To be continued......_ |